企業の決算書を読むにあたり財務会計の知識はなくてはならない。
しかし、専門用語と数字ばかりの会計を学ぶモチベーションを保つのは困難である。
しかし、本書は数字だけにとらわれずに図を用いることで財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)から会社のビジネスモデルまで読み解くことができると主張している。
3人の登場人物の会話により説明がされるため数時間程度で読み終えることができる。
財務会計の入門書としては最適な一冊である。
本書の構成
- 大きいボックスに注目するだけ! ー比例縮尺財務表
- 回らない回転寿司が、なぜ増えているのか? ー損益計算書(PL)と利益
- 二束三文の土地で高収益のテーマパークの謎 ー貸借対照表(BS)と有形固定資産
- 医薬品メーカーはギャンブル銘柄!? ー貸借対照表(BS)と無形固定資産
- お金の流れで見る、牛丼屋の戦い ーキャッシュフロー計算書(CS)と経営戦略
- コンビニオーナーの憂鬱 ーコンビニ会計と経営者
- なぜあの会社が?急成長の秘密を探る! ーSPAモデルと利益率
- テレビ局が、なぜ化粧品を売っているのか? ーセグメント情報と儲けの中身
- 財務諸表は経営者の哲学を映す鏡 ー会計と経営哲学
第1章が本書の主題である。
財務3表をグラフィカルに理解するためのツールである比例縮尺財務表の説明をしている。
その後の章は、企業のビジネスモデルの理解や競合他社との比較の際に比例縮尺財務表が助けになることを具体例を用いて説明している。
比例縮尺財務表とは?
比例縮尺財務表とは財務3表(貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書)を各項目の数字の大きさに応じて示したものである。
数字の比率に合わせてボックスの大きさを変えることで、ひと目で注目すべき項目がわかり、会社のビジネスモデルの理解につながる。
また、比例縮尺財務表を用いることで貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)を比較するだけで総資産回転率がわかる。
総資産回転率とは売上高÷総資産で求められる。
総資産回転率が高い(BSよりPLが大きい)企業ほど少ない資産を効率よく使っていることがわかる。
ただし、総資産回転率が高い企業ほど優れているというわけではなく、BSとPLの大きさを比較するのみでビジネスモデルの違いがわかることが重要である。
成長企業のキャッシュフロー計算書(CS)の特徴
財務3表の残りのひとつは企業のお金の流れを表すキャッシュフロー計算書(CS)である。
- 営業CF
- 投資CF
- 財務CF
営業CFは本業による利益、投資CFは設備投資や株式投資の額、財務CFは借入や返済をそれぞれ表す。
成長企業のキャッシュフロー計算書(CS)は本業の利益と事業拡大投資のために営業CF・投資CFがともにプラスであるという特徴がある。
財務CFのプラス/マイナスは借入を増やしてどんどん事業を拡大するか、自己資金の比率を高めて安定的な経営を目指すかによる。

まとめ
財務会計は専門用語と数字が並びとっつきにくいと感じる。
しかし、本書は比例縮尺財務表というツールを用いることで数字に頼らずに視覚的に財務3表を読み解き、企業のビジネスモデルを理解することができる。
実際の企業の財務3表を用いて様々な企業のビジネスモデルが開設されており、財務会計の入門書としては最適な一冊である。
コメント